神奈川県立横須賀高等学校同窓会 朋友会
【紹介】矢城 潤一 さん(高32期)
ホーム   >  会員のひろば  >   会員の紹介  >  【紹介】矢城 潤一 さん(高32期)
(取材日:2016年7月15日)

プロフィール
1978年 三浦市立三崎中学校卒業
1978年 県立横須賀高校入学 7組
1981年 県立横須賀高校卒業
1987年 専修大学経済学部卒業
1987 フリーの助監督として映画の世界へ
北野武・原田眞人、長崎俊一などの監督の現場で研鑽
2000年 「ある探偵の憂鬱」を自己資金で制作公開し、バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガーアワードにノミネートされる
2001年 映画「6週間プライヴェートモーメント」を共同脚本
2003年 映画「ウイニングパス」を共同脚本
2008年 「ねこのひげ」を監督し、制作公開
2009年 初小説「55(ごじゅうご)」が、宝島社の第5回日本ラブストーリー大賞の
エンターテインメント特別賞を受賞
2010年 映画「ふたたびswing me again」(「55」を改題したもの)を脚本
2013年 映画「ばななとグローブとジンベエザメ」を監督
そのほか、様々な映像作品に関わり、テレビドラマの脚本も手がける
 
「よこすかの映画を作ろう!!!」  地元横須賀を舞台に、地元の監督で、地元の俳優中心に「まるごと横須賀」で映画を作りたい。ということで始まった映画『スカブロ』がいよいよ11月から撮影開始です。脚本・監督の矢城潤一さんにお話を伺いました。
いつごろから映画監督になろうと思ったのですか?
 高校時代は、映画を観るのは好きだったけれど、生業にしようとは思っていませんでした。決まりきったことをやるのが得意じゃなかったので、サラリーマンは無理だと思いましたね。
 大学4年の時、何をやろうかいろいろ考えた末、映像なら何とかなるんじゃないかと、軽い気持ちで会社を回ったけれど全部ダメでした。
 最終的には、テニス仲間で、ヨットハーバーが見えるので良く映画の撮影に使われる喫茶店のマスターの紹介で、映画プロデューサーと出会い、現場に入ることになりました。この関わりが自分の人生を決めることとなり、人生何をやってもムダじゃないと思いました。
『現代の小津作品だ!』と絶賛されたとか...
監督の仕事と映画制作のご苦労などをお聞かせ下さい。
 「ねこのひげ」がドナルド・リチー氏(日本文化を紹介するアメリカ出身の映画批評家・監督)から現在の小津作品と評価していただきました。何も起こらないけれど、淡々とした日常のことで何かを表現する...そういう映画は大資本では撮れないので、オリジナルで作るしかありませんね。
 映画制作は莫大な費用がかかります。バックアップがあって製作委員会を作りテレビで宣伝するような大作映画とは違い、僕らが作るインディーズの映画は、内容に関してはほとんど制約を受けず、自分の好きなようにできますが、ちゃんと回収できる作品は少ないのが現状です。そこをどう突破するかが次回作の課題です。
 入った当時は、徒弟制度が残存する唯一の業界と言われ、斜陽時代だったし、厳しかったですよ。体育会系だったのであっていたのかもしれませんね。無頼派といわれる監督が多かったころで「お前みたいなのは監督になれない」と言われ、あまのじゃくなので「絶対なってやる!」と思いました。監督によって、スタッフや現場の雰囲気が違います。使い走りみたいな仕事も一生懸命やりました。それが良かったと思います。いろいろ話を聞いてくれて「監督志望なら脚本が書けなければなれないから書け」と言われそれが最終的には力となっています。
 監督の役割は、キャストやスタッフとの共同作業のジャッジメント、その時に結集した才能を出してもらいながらまとめる役です。原作者やプロデューサーの意見もあって、調整役なのでたいへんです。
撮影現場で (左が主演の中原丈雄さん、右が矢城監督)
その点自分で脚本を書かれるので、自分の撮りたいように撮れますね。
 慢心しないでいろいろな人の意見を聞いて最良のものにしていかないと自己満足の世界になってしまいます。今回の「スカブロ」は特にみんなの意見を聞いて作った方が良いと思います。
 横須賀の活性化、観光のPRになればという思いです。みなさんに観て楽しんでいただきたいです。
 他にはワークショップを開催して、若手の俳優を教えたりしています。映画に興味のある若者には「苦労覚悟でなければ止めておけ」と言っています。昔は風呂なしの安アパートで、作品に入ると何日も家に帰れないこともありました。寝る時間も2~3時間は当たり前。風呂にも入れないので途中で銭湯に行かせてもらったり、そういう苦労があるので何でもできます。
 学校で学んだことと現場のギャップがありすぎて辞める人も多いですね。臨機応変さが必要だと思いますよ。
「スカブロ」については、いかがですか?
 どぶ板通りで、ミュージシャン志望の弟と3年振りに帰ってきた売れない俳優の兄。そんな兄弟の元に日米ハーフの女性が現れ、横須賀の各地を舞台に母親探しの旅が始まる・・・と言う内容で、主演の窪塚俊介さん、音楽担当の小林洋平さんは卒業生、他にも渡辺真知子さん、武藤寛さんら横須賀出身の俳優さんたちの出演が決まっています。
 11月にクランクイン、来年春以降の公開目指します。制作費5,000万円は、企業と市民に協力を呼びかけています。ぜひ、たくさんの卒業生にもご協力をお願いしたいと思っています。詳しくは、まるごと横須賀の映画をつくる会
 http://tunnel-films.or.jp/ をご覧下さい。
制作費の協力金は、5,000円から100万円まであります。
横高時代は、どんな生徒でしたか
 部活はバスケット部でした。伝統的に練習がきつくて、女子と一緒だったので延々と長時間やっていましたね。行事なども積極的に参加しなかったし、クラスメイトからみると「八木は斜に構えていたよね!」っていう感じ。でも、体育会系なので体育祭は応援副団長をやらされたり...
  小中学校では学級委員をやったりしていましたが、反動というか高校へ行ったらそういう役はやらなくていいと感じていたのかも...

 
上の写真は、いずれも体育祭で(左の写真では、青シャツの左から二人目がご本人)                   
横高生へのメッセージをどうぞ
 
 とにかく何をするにも一生懸命やると、何か必ず次が見えてくると思います。高校時代はちょっと違って負の連鎖もあったけれど、その時々で何かを一生懸命やってきた気がします。やりたいことをみつけた時にそれができる力を横高生は持っていると思います。迷走するときもあるかもしれませんが、そこを信じて、自分を信じてやって欲しいと思います。
 
取材後記
 急な紹介で、矢城さんと久里浜街道のデニーズでお会いしました。この近くの横須賀市舟倉にお住まいとことで、自転車で颯爽と現れました。映画監督と話をするのは初めてで、緊張しておりましたが、気さくな方で、「監督をするなら脚本を書かなければ」と言われたとのことで、様々な脚本を手がけ、小説を書いて特別賞を受賞するなど、並大抵の方ではありません。後にドラマの「相棒」のメイン監督となられた和泉聖冶さんとの仕事にも関わったそうで、興味のある私としては、多いに盛り上がりました。映画の世界は、資金が大変で、誰しもがヒットすると思って制作するんでしょうが、ふたを開ければメジャーな映画会社でもなかなか当たらない。そんな中で自己資金で奮闘している様子が立派でした。(高17期和田良平)

以前からうわさは伺っていて気にはなっていたので取材できて良かったです。自然体でロマンチストという印象を受けました。気さくにお話をさせていただいてありがとうございました。「相棒」の話が出たところで、インタビュアー2人とも大ファン、脱線していろいろお話を伺いました。そういえばずっと以前の会報の人物ハイライトに「相棒」の脚本家砂本量さん(高29期 鈴木良紀)の記事があったことを思い出しました。矢城さんも横高生とは知らずに一度お会いしたこともあったそうで、残念ながら2005年に亡くなられたとお聞きしてガッカリ... 最近「仰げば尊し」他、横須賀がロケ地になっている番組も多く楽しく観ています。海に囲まれた素敵な横須賀を知ってもらえるし、活性化につながると信じております。完成を楽しみにしております。 (高23期 石渡 明美)
ページの上に戻る